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デザイナーなら自分で作れる!?もうすぐ3Dプリンターに置き換わっちゃうかもしれない製品10

2016年05月30日 09時36分更新

文●Cate Lawrence

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何でも3Dプリンターで作れるようになれば、デザイナーがデザインするのはWebやグラフィックだけではなくなるかもしれません。

3Dプリントは、この10年で大企業が扱うものから一般家庭でも使えるものへと大きく進歩しました。価格もますます手頃になり、3Dプリントによる製品もスピーディーに開発されています。しかし、規制がイノベーションのスピードに追いつけなくなると同時に、3Dプリントの倫理的、法的、道徳的な問題も顕在化してきています。記事では、近い将来、製造の中心手段が3Dプリントになると予想できる製品を10個紹介します。

1. 健康科学におけるバイオプリント

写真提供:Wake Forest Institute for Regenerative Medicine

写真提供:Wake Forest Institute for Regenerative Medicine

ノースカロライナ州ウェイクフォレスト大学は、理論上人体への移植可能な臓器や細胞組織、骨を製造できる3Dバイオプリンターを開発しました。同大の研究者たちは、プラスチックのような素材とヒト、ウサギ、ネズミ、ハツカネズミの生体細胞を使って、筋肉、骨、耳の構造体を作成しました。生体細胞が3Dプリント過程で生きたままだったのは驚くべきことです。また、3Dプリントで作成した構造体のげっ歯類動物への移植にも成功しました。同じように人への移植が実現できれば、患者自身の細胞を使って新しい骨や筋肉、または軟骨を作成する医療が実現するかもしれません。

この一連の実験は人工皮膚をプリントできるプリンターが使われました。3Dプリンターの「インクカートリッジ」にはさまざまなタイプの細胞が保存されており、プリンターは規定の順番に従って細胞を組み合わせる仕組みになっています。現在、ウェイクフォレスト大学の研究者たちは、生死にかかわる火傷を負った兵士たちの皮膚をその場で「プリント」できる、インクジェットプリント技術を使用しています。この技術によって、皮膚細胞が細胞を支えているその他の重要な物質とともにプリンターカートリッジ内に保存され、兵士が怪我をしたその場で負傷箇所への皮膚の移植ができるようになるでしょう。

また、頭蓋骨移植もSF世界の産物に過ぎないように思えますが、2015年、中国の医師たちが水頭症を患う赤ちゃんの頭蓋骨を3Dプリンターで3つ部分からなるチタニウム製頭蓋骨を作成し、命を救いました。3Dプリンターで作られるチタニウム製頭蓋骨は強くて軽量、そして患者の体格に完璧にフィットさせられます。

2. 医薬品

写真提供:Aprecia Pharmaceuticals

写真提供:Aprecia Pharmaceuticals

アメリカに拠点を置く製薬会社、Aprecia Pharmaceuticalsは最近、てんかんの発作治療薬、Spiritam(レベチラセタム)を3Dプリンターで製造することに世界で初めて成功しました。このプリント技術はZipDose(同社の商標)を用いて、MITが開発したものです。粉末状の薬を液状物質で挟み、光顕レベルで結合する製造方法なので、このプリント技術から生まれた薬は液体に接触すると素早く溶けます。

医薬品の3Dプリントはオーダーメイド医療に向けての大きな一歩といえるでしょう。プリントによって薬の表面積を変えられれば、大きさ、服用量、外見、吸収率を患者に合わせて作成できるようになります。将来的にはクリニックや病院、薬局、そして患者の自宅にオンデマンドの医薬品プリント設備が見られるようになるかもしれません。

3. 歯のDIY矯正

歯科も3Dプリントによって大いに変わる可能性があることは驚くに値しません。そのきっかけになったのが、20歳の学生が本来なら数千ドルかかる歯列矯正器具を、自分用に60ドル以下ですべてきれいに作り上げてしまったというニュースです。歯列矯正器具の作成は、表向き、適切な知識と材料を持つ人だけに限られているように見えますが、3Dプリントによって従来の製品より安くできることが分かりました。

4. ロボットの鳥

写真提供:Materialise and Clear Flight Solutions

写真提供:Materialise and Clear Flight Solutions

美しい生き物である鳥も、飛行機に損傷を与えて乗客の安全を危険にさらしたり、病気を蔓延させたり、あるいはせっかくの穀物を台無しにしてしまうことがあります。こうした問題を解決するために、オランダ系企業Clear Flight Solutionsはハイテクロボットの鳥「Robirds」を製作しました。

写真提供:Materialise and Clear Flight Solutions

写真提供:Materialise and Clear Flight Solutions

共同で開発を進めたMaterialise社は次のように説明しています。

Robirdsはロボット工学で作られた遠隔操作ができる猛禽類の鳥です。本物そっくりの見た目と重さなので、現代のカカシとして使えます。Robirdsは翼をはためかせて自力で動き、実際の鳥と同じように飛行できます。

Robirdsは空港や果樹園、畑、ゴミの廃棄場に集まる厄介な鳥たちを追い払うために使われます。重量が3kgまでの鳥を追い払える「Falcon」と、どのような種類の鳥でも駆逐できる「Eagle」の2種類がすでに開発されています。

5. 自転車

写真提供:Bastion Cycles Pty Ltd

写真提供:Bastion Cycles Pty Ltd

必要なコストや3Dプリンターのサイズ、さまざまな製造上の問題があるため、3D自転車プリンターが小売店に設置されるのはまだまだ厳しいと言えるでしょう。しかし、こうした問題があるのにもかかわらず、チタニウムパーツを3Dプリントで製造するBasition Cycles、家庭でも3Dプリントで作れる自転車部品を提供するETT Industriesにより、自転車生活はより快適になってきています。新しい3Dプリント技術の可能性を信じ、3Dプリントで製作した部品を自分の自転車に取り付けたいというサイクリストにとっては、素晴らしいニュースです。

6. 靴

写真提供:New Balance

写真提供:ニューバラランス

靴の3Dプリントはきわめて魅力的です。自分のサイズにぴったりと合うカスタムシューズを欲しがらない人などいないでしょう。しかし、現状では靴の3Dプリントは靴のパーツや限定版に限られています。2016年の4月、ニューバランスが3Dプリントミッドソールを搭載した高性能のランニングシューズ「Zante Generate Running Shoes」を発表。2015年にはアディダスが3Dプリンターで制作したミッドソールのランニングシューズを発表し、3月にはアンダーアーマーが3Dプリントミッドソールと正確なフィット感を生み出す甲の部分もデザインした3Dプリントによるシューズをお披露目しました。

靴はスポーツ分野以外でも、ユナイテッドヌードのような最先端をゆくファッションブランドの店頭でも客のすぐ目の前で3Dプリントされます。また、Feedzも、客1人1人の足の写真をもとに3Dプリントの靴を製作するという興味深いコンセプトを発表しています。

写真提供:ユナイテッドヌード

写真提供:ユナイテッドヌード

7. 住宅

写真提供:Contour Crafting

写真提供:Contour Crafting

家をまるまる1軒3Dプリントのみで建設するのは不可能であり、また非実用的であるものの、コンター・クラフティング(CC)はそれよりも一歩先を進んでいるようです。CCは、サウスカロライナ大学のBehrokh Khoshnevis博士によって開発されたレイヤーファブリケーション(訳注:layered fabrication)技術で、建築業界を革命的に変えると言われています。CCはレイヤーファブリケーション技術を活用することで「電化製品の配管や鉛管、空調設備の整った一軒家あるいは住宅群、しかもそれぞれデザインの違う住宅群を、1回の工事のみ建築できるように自動的に設計できるかもしれません」と話しています。

CCは仮設住宅、低所得者用の住宅、そして商業施設建設にとって価値のある選択肢として注目が集まっています。NASAも天体での建設に利用できるか模索しています。

8. 絵画

写真提供:The 3Doodler

写真提供:The 3Doodler

他のペンと同じように手になじみ、自分だけの3Dプリント製品を「描く」ことができるペン、3Doodler。これを使えば、今、3Dプリント技術でできる最もおもしろい体験ができるかもしれません

3Doodlerはグル―ガンに似ているとよく言われます。ボタンを押して描き始め、再度、ボタンを押して停止します。描き始めるときにペン先を平たい表面に押しつけ、自分で思い描いた3D物体を空中に描くような仕組みになっています。

9. 銃

写真提供:Defence Distributed

写真提供:Defence Distributed

おそらく、3Dプリントの一例としてもっとも物議を醸しているのは銃でしょう。2013年には3Dプリンターによる世界初の銃がアメリカで発射に成功Defense Distributedによって発明された銃のパーツのほとんどすべては、ABSプラスチックを使って3Dプリンターで作られました(銃針のみ非プラスチックの金属で作られました)。この3Dプリント銃の作成方法は全世界に向けてオンライン公開され、その後2日間で10万回ダウンロードされました。米国政府はレシピのダウンロードおよび拡散の阻止に尽力しましたが、オンラインで発信されると回収は困難なのです。

10. 人工器官の作成で人の命を救う

3Dプリンターで作る人工器官は、人工器官を必要とする世界中の人々の生活にすでに大きな変化をもたらしています。その1つの例がRefugee Open Ware(ROW)です。

Refugee Open Ware(ROW)は、国際的な人道支援財団であり、紛争地域の難民と難民受け入れコミュニティ双方の人権保護達成度を改善するための技術導入をミッションとしています(参照)。ROWは紛争被害者が抱える問題の解決策を計ると同時に、難民の受け入れコミュニティーの訓練もします。現在はヨルダンにファブリケーション研究室を構えており、現地の人々に3Dプリントによる人工器官の製造・製作訓練を実施しています。

(原文:10 Examples of 3D Printing Transforming Our Reality

[翻訳:加藤由佳]
[編集:Livit

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