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脱・新規依存!フリーランサーがWordPressで安定収入を得るための最短ステップ

2017年02月09日 23時00分更新

文●Stephen Altrogge

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Webサイトの新規構築案件は減り、「メンテで食っていく」重要性は高まるばかり。WordPressのサイト構築を得意としているなら、新たなビジネスの柱として取り組むべきかもしれません。

ビジネスオーナーにとって、安定した収入源の獲得はまさにシャングリア(ジェームス・ヒルトンの小説『失われた地平線』に登場する理想郷の名前)です。競合と競って新規クライアントを獲得するのではなく自分のサービスを継続して利用してくれるクライアントがいれば、安定した収入を得られるからです。新しい収入源を探し回るストレスがない代わりに、将来に向けての展望も開けます。

しかし、デザイナー業やデベロッパー業を営む人にとってWordPressで「安定した収入」という言葉は少々意味不明かもしれません。デザイナーや開発者の場合、お金が入ってくるのは「ホットだった頃のMySpaceのようなWebサイトをこの際一新したい」など、クライアントから新しい依頼があったときだからです。つまり、基本的にはクライアントがなにか変更したいと思うまで待っていなければなりません。そのため、定期的な収入ということ自体がまさに謎のように思えるわけです。

しかし、良いニュースがあります。すでにあるWordPressスキルを使い、WordPressメンテナンスという仕事を始められることです。いままでの本業である開発やデザインを続けつつ(続けたい場合)、メンテナンス業によって安定した収入を得られるようになります。

この記事では、WordPressメンテナンスビジネスをなぜ立ち上げるべきなのか、そのためにはなにをどのようにすべきなのか、徹底的に解説していきます。最終的にはみなさんが自分のメンテナンスビジネスをスタートさせる方法をつかんでくれたら幸いです。

ステップ1:どのようなメンテナンスサービスをするのか決める

最初に、クライアントにどのようなサービスを提供するのか選びましょう。クライアントにメンテナンスサービスを提供するには、その内容を把握していないとなにも始まらないからです。そして選択肢は次のように無数にあります。

  • Webサイト登録とホスティング:Webサイト運営にはとにかく必要で、メンテナンスサービスメニューの1つとしてあっても損はない
  • セキュリティ:Webサイトがハッキングを受けた場合、放っておけば被害はひどくなる一方
  • バックアップ:どのようなWebサイトでも定期的なバックアップが必要。Webサイトのなにかに大規模な不具合が発生した際、バックアップがなければ復元できない
  • Webサイトのデザイン・開発の微調整:Webサイトの変更を希望するクライアントがいる場合、毎回新規プロジェクトを始める代わりに月額セットの範囲内で応じるという手もある
  • コンテンツの変更や作成:独自コンテンツの作成やアップロードを苦手とするクライアントがいる場合、代行して課金するという方法がある
  • ソーシャルメディア運用:ソーシャルメディアでの知名度が必要だとは知りつつも、なにをしたら良いのか分からないというクライアント向け

メンテナンスサービスには、アクセス解析、メールマーケティング、オンライン広告、コンサルタントなどほかにもいろいろなものがあります。いまの仕事への負担が一番少なく、かつ最大の収益を生み出せるサービスを選びましょう。

逆にメンテナンスサービスだけに集中する場合、メンテナンス作業に興味のないデザイナーや開発者と提携するという方法もあります。

手順2:価格モデルの決定

次に、メンテナンスサービスにいくら課金するのか決めるのですが、その前に検討しなければならない要素があります。

たとえば、毎月の経費です。ただマージンのことを考えるだけでなく、月間・年間の経費額をカバーし、収益の少ない時期やクライアント獲得のための時間・費用への余裕も持っていなければなりません。これを軽く見ると破格でサービス提供をすることにもつながり、課金額はいったんクライアント相手に提供した以上、修正が難しいため注意が必要です。

さらに、競合サービスの価格をチェックした上で課金額を決めます。競合よりも質の高いサービスを提供している場合は、必ずしも最安値に設定する必要はありません。

どのようなランクのサービスを提供するのかも決めます。いろいろな種類と価格のサービスの組み合わせで、予算の制約があるクライアントには価格の低いサービスを提供できるのはもちろん、より質の高いサービスを求める上客も獲得できます。さらに、安いサービスから始めたクライアントには、追加サービスを選ぶようにアプローチもできます。

クライアントとの交渉では相手に価格を決めさせてはいけません。クライアントがサービスの価値や通常の相場をきちんと理解していない可能性があるからです。また、安い値段で劣悪なサービスを提供する同業者もいるので、底辺を目指した競争は避けるべきです。

最後に、トラブル時の対処法も常に考えておいてください。トラブル解決に長い時間を費やすこともあるので、こうした可能性も価格に反映させなければなりません。

ステップ3:サービスを宣伝する

どのようなサービスをいくらで提供するかはっきりと決まったら、今度は世界に向けて宣伝していきます。まず、提供する「サービス」の詳細を記載したWebページを作ります。これはサービスに興味を持つ見込みクライアントを引きつける第一段階となります。

ここで気をつけたい大事な点を紹介します。

クライアント側の利益を重視する−サービス提供者としては提供するサービスの詳細を説明したいところですが、実際には自分のサービスによってカスタマーの生活がどれくらい劇的に改善されるのかという点にもっとも時間をかけなければなりません。クライアントに「安心」を売っているのだということを忘れないでください。バックアップ、セキュリティ、最適化などのサービスはすべて、カスタマーにすべて正常に機能していると知らせ、安心させるためにあります。そのため、サービスによって生活がどれくらい良くなるのか詳しく説明する必要があります。

差別化する−価格、サービスの種類や質、きめ細やかさ、またはそのほかの要素のどれかにおいて、競合より勝っていなければなりません。また、自分のサービスがなぜほかよりも優れているのかも、遠慮せずに詳しく説明します。

不便さを理解・明示する−特定のカスタマーが感じている不便さを理解し解決策を提案すれば、カスタマーは提供するソリューションが的を得たものだと感じてくれます。

連絡しやすい環境を整える−明らかなことでですが、わりと忘れられがちなことです。しかし、新規クライアントをゲットしたいのなら、連絡先をWebページの全面や中心に置くなど、きちんと連絡が取れる環境を準備しなければなりません。

また、サービスを簡単に広告するために使えるもう1つの方法として、ソーシャルメディアで宣伝するという手もあります。ソーシャルメディアの知り合いが1人でもあなたのサービスを利用したいと思っていたり、またはWordPressメンテナンスサービスを必要としている人を知っていたりすれば大きなチャンスです。

ステップ4:既存クライアントにメンテナンスの大切さを伝える

技術によほど詳しいクライアントでもない限り、Webサイトのメンテナンスをなぜ人に頼んでまでしなければならないのか理解していないクライアントがほとんどです。というのも、結局は高性能の車のエンジンならまだしも、Webサイトの話だからです。すでにちゃんとしたWebサイト制作にお金を払っているのに、今度はなぜメンテナンスにもお金を使わなければならないのか、と思っているのです。

そもそもなぜメンテナンスが必要なのか説明するために時間を割くのも、WordPressメンテナンスビジネス構築のステップとしてとても大事なことです。次のようなポイントのアピールをすすめます。

  • Webサイト最適化:最適化されていないWebサイトほどいろいろな問題を引き起こすものはない。Webサイトの読み込み時間が長ければWebサイト訪問者がすぐに離れ、かつGoogleによるペナルティもあるため、検索ランキングでの順位が下がってしまう
  • 安心感:クライアントが自分でWebサイトの設定を変更を試みた結果、めちゃくちゃになってしまったというケースはよくある。そのような作業をすべて任せることで、Webサイトがいつまでも正常に機能するようになり、必要な更新もすべてできると説得
  • 専門知識:クライアント側も、短時間で解決できる問題を莫大な時間をかけてまで自分で解決したいとは思っていない。プロのサービスを提供し、クライアント自身がWebサイトのメンテナンスにかけている時間を劇的に減らしていることをアピール

定期的なメンテナンスが必要だと説明するのはそこまで複雑でも難しくもないのですが、技術に精通していない人にとっては理解しがたいかもしれません。本当に価値のある投資であることを分かってもらうまで、辛抱強く時間をかけて説明していくことになます。

以下、既存クライアントにメンテナンス契約を勧める際に使える方法です。

  • 期間限定で割引を提供する:購入から1カ月間または数カ月間にわたって割引を提供し、カスタマーにメンテナンスサービスの契約をちらつかせるという方法。サービスの価値を理解してもらえれば、価格が上がってもそのまま契約してもらえる可能性が高いという利点もある。このとき、値段がいつどのくらい上げるのかは明確に提示する
  • プロジェクト予算にメンテナンス価格を加える:デザイン・開発プロジェクトを提供する際、初期段階でメンテナンス1年間分の値段を入れて提案するという方法。開発者がいるからこそプロジェクトサポートまでできるということを伝える
  • 限定トライアルを提供する:期間限定割引と似ているが、ポストローンチのスタンダードサポートに代わってメンテナンスサポートの限定トライアルを投入し、カスタマーのメンテナンスへの意識を固めるという方法

しかし、クライアントへの無料サポートはおすすめしません。無料サポートに固執し、サポート期間終了後は契約を渋るようになってしまうからです。

手順5:ツールを選び、揃える

クライアントを何人か獲得できたら、メンテナンス作業に使うツールを選ばなくてはいけません。検討したいのは次のようなツールです。

顧客関係管理(CRM)ツール−クライアントとクライアントに関するさまざまなデータの管理に使うシステムです。ビジネス拡大に合わせてきめ細やかなツールが必要になるかもしれませんが、シンプルなスプレッドシートでも十分です。

サポートシステム−チケットシステムがあれば、クライアントからヘルプリクエストを処理する際に便利です。

デスクトップ環境−Webサイトに変更を加えるとき、実装前にテストが必要ですが、そのためにローカルデスクトップ環境が役に立ちます。DesktopServerとWordPressとの相性も抜群です。

高性能のエディター−バックエンドでコードへの変更をするには、完全な統合開発環境(IDE)が必要になります。

ブラウザー開発ツール−管理するWebサイトの点検に使います。ChromeやFirefoxには独自のブラウザー開発ツールがあります。

FTP−FTPクライアントは、Webサイト上でファイルのアップロードやダウンロードをするときには特に必要です。

アップタイム管理−クライアント側のWebサイトをダウンさせるわけにはいかないので、アップタイム管理ツールを使ってWebサイトのアップタイム管理をします。

セキュリティ−説明せずとも大事なことです。クライアントのWebサイトがハッキング攻撃を受けたら、どこでハッキングが発生したのかという再発防止と復旧方法をただちに見極めなくてはなりません。

アクセス解析−誰がどこからWebサイトを訪問しているかなど基本的な統計情報をモニタリングするには、Googleアナリティクスが便利です。

ステップ6:クライアントに価値をアピールする

クライアントにサービスを毎月契約してもらうには、価値を理解してもらわなければなりません。どのようなサービスをし、クライアントがどのような利益を得たかという定期レポートを作るというシンプルなアプローチがおすすめです。次のようなレポートが効果的です。

  • 月間トラフィック(SEOによるトラフィック量も含め、最適化の効果を提示する)
  • トップコンテンツ(受注して制作・宣伝したコンテンツは特に)
  • ハッキング脅威の回避件数
  • モバイル最適化とモバイルトラフィック
  • アップタイムレポート(サービスの信頼性をアピールするため)

こうしたレポートにより、クライアントはサービスの価値を知るのです。

最後に:すぐにでも始めるべき

WordPressメンテナンスビジネスの経営は生易しいものではなく、また一攫千金も狙えません。扱わなければならないサポート問題は多く、またサービス内容や必要性が分からず不満を抱えたクライアントもいるからです。そのような状況でも無用なトラブルを起こすことなく問題を解決するには、辛抱強く冷静に、そして親しみやすさを感じられるようなマナーで接するように気をつけなければなりません。

しかし、大変なことは多いものの、メンテナンスビジネスは安定した収益を獲得し、フリーランスの大敵である受注過多・過小のサイクルを抜け出す方法としては抜群です。また、クライアントに付加価値を提供し、ビジネスの関係を深めることにもつながります。

(原文:6 Steps to Building a WordPress Maintenance Business

[翻訳:加藤由佳/編集:Livit

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