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「メルカリ」「Retty」人気アプリが明かした成功するプロモーションの秘密

2017年04月11日 08時00分更新

文●D2Cスマイル

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D2C Rは、2017年3月22日、デジタルマーケティングの領域で活躍する専門化を招き、収益モデルが確立されたゲームアプリの一方、カテゴリごとに多様な構築と広がりを見せる「非ゲームアプリ」にフォーカスした「今注目企業が語る! 非ゲームアプリのマーケティングセミナー」と題したセミナーを開催しました。

今回は、アプリのトレンドを膨大なデータから読み解くApp Annie 日本・韓国リージョナルディレクター 滝澤琢人氏、ヒットアプリを生み出し、ユーザーを増やし続ける企業からRetty株式会社 執行役員 内野友明氏、株式会社メルカリ シニアマーケティングスペシャリスト 鋤柄直哉氏を招いて開催したセミナーのダイジェストです。

(左から)株式会社メルカリ シニアマーケティングスペシャリスト 鋤柄直哉氏、App Annie 日本・韓国リージョナルディレクター 滝澤琢人氏、Retty株式会社 執行役員 内野友明氏、株式会社D2C R 取締役 戸倉優太氏

モバイルアプリがもたらす市場環境の変化

アプリに関する市場データと分析ツールを提供するApp Annieから滝澤琢人氏が登壇。世界規模で収集・分析される多角的な自社データを用いながら「モバイルアプリがもたらす市場環境の変化」をテーマに話してもらいました。

App Annie 滝澤琢人氏

最初に、米国における外食系アプリのMAU(Monthly Active Users :月当たりのアクティブユーザー数)ランキングを提示した上で「上位には“アプリはドライブスルーに匹敵する技術革新”と公言する『タコベル』を始め、モバイル注文・決済に注力する企業が目立つ」と指摘。

では、日本でのランキングはというと、既存の自販機と連携する日本コカ・コーラ『Coke ON』などを挙げながら、「オフラインでのタッチアップポイントを増やすことで、ユーザーを獲得するアプリの台頭が特徴的」とのこと。オフラインでの決済におけるアプリの活用など、オフラインでの接点強化や、プロモーションの重要性が見て取れるはずです。

日本における外食系アプリのMAUランキングの推移を解説するApp Annie滝澤氏

小売アプリでは米国や韓国との比較の上で「日本では、まだまだ小売アプリの合計利用時間が少ない。しかし、年を追って利用時間が増えていることから、今後のさらなる伸びが期待できる」と、そのポテンシャルを明言。また、アプリをダウンロードしたユーザーにポイントを贈り、そのうち43%が実店舗で使用されたという良品計画『MUJI passport』の事例をもとに、アプリを起点とした実店舗の収益増にも言及しています。

さらに銀行業界については、「若年層にはアプリが有効」というデータや、Bain & Companyが発表した「リテールバンクの顧客接点においてモバイルアプリは煩雑度が低く、満足度が高い」というデータを引き合いに、米国銀行業界においてモバイルアプリの躍進が目覚ましいことを紹介。一方、日本国内において注目すべき点として「ファイナンス系アプリのMAUランキングの上位に『au Wallet』『楽天カード』など、ポイントシステムをもつアプリが目立つ」と指摘。滝澤氏の言葉通り、ポイントシステムの導入が国内市場のニーズに合致していることが見えます。

「モバイルアプリを戦略の中心に据えるアメリカの潮流は、すでに日本でも見受けられ、消費者はネイティブなモバイルアプリ体験を求め、そうでなければユーザーとして定着しないことは明らか」と滝澤氏。もはやWebのコピーでは意味をなさず、モバイルアプリ独自の体験を提供することの重要性が、数々のデータから、あらためて浮き彫りになったのではないでしょうか。

『投稿・データ・人』~Rettyのユーザーが伸び続けている理由~

次のテーマ「『投稿・データ・人』~Rettyのユーザーが伸び続けている理由~」について、Retty株式会社内野友明氏が登壇し、緻密な戦略の上に導き出されたユーザー数増加のワケについて話しました。

Retty株式会社 内野友明氏

『Retty』のリリースは2010年。すでにWebにはグルメ情報が氾濫し「後発であった私たちが目指したのは“自分にあったお店”が探せるアプリ」と内野氏。実名投稿による信用性、さらに投稿者の趣味志向がレビュー内容に傾向として現れることから、よりユーザー個人個人にフィットしたクチコミ投稿が閲覧できるという点が大きな特徴です。

CGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)サービスにおいて、投稿者確保の必要性は言うまでもありません。第一段階として、アプリのUIは『投稿者』に特化。閲覧者目線のUIを盛り込むことは、投稿のしやすさや仕組みの分かりやすさなどの担保を妨げるために避けたそうです。それが元で全体的なユーザー数が一時的に伸び悩んでも、次の施策段階で中長期的な伸びを見すえた戦略となっています

さらにRettyでは、コアな投稿者を招いた食事イベントを開催。「CGMにおいて利用者を牽引するコアな投稿者は、実はそんなに多くない」と明言する通り、貴重なコアユーザーとの密な交流から、インフルエンサーを獲得する考えです。

100万投稿をKPIに設定し、『投稿』に特化した期間は約3年。それ以降が次の戦略となる『データ』、つまりSEO対策です。

「ニールセンが2015年に発表した通り、アプリが生活に浸透した今でさえ、お店の検索はブラウザー。そのため、あらゆるSEO対策をした」

その結果、アクティブユーザーは順調に伸び、月間利用者数2200万を達成。内野氏は「ブラウザーという土台があったからこそ、そこからアプリに導く“Web to App”がうまく回り、アプリユーザーがぐんぐん増えた」と、戦略の成功を振り返ります。

最後に「ブラウザーユーザーとアプリユーザーでは、思考や動きがまったく違う。後者のほうが機動頻度やお店に行く回数が、5倍から10倍近く大きい」と、アプリユーザーの重要性をあらためて強調。コアユーザーの目線を第一に掲げる創業時の理念を変えず、「新たな施策を打つときにも、必ずUXデザイナーを参加させている」と語り、今後も投稿者の声、つまりは『人』を主軸とした展開を目指す旨を話しました。

オンライン・オフラインを活用したアプリマーケティングの考え方

次に登壇したのは、株式会社メルカリの鋤柄直哉氏で、株式会社D2C Rの戸倉優太氏をモデレーターに「オンライン・オフラインを活用したアプリマーケティングの考え方」というテーマで、話してもらいました。

業績を伸ばし続けるフリマアプリ『メルカリ』の3つの柱

「日本最大のフリマアプリ」「3分で簡単出品」「安心安全の決算」、この3つを柱に業績を伸ばし続ける『メルカリ』。2013年7月にアプリをリリースし、2014年5月に初のテレビCMを放映。同年10月には手数料の有料化に乗り出すもダウンロード数は停滞することなく、2016年11月には4000万ダウンロードを突破しています。

まさに右肩上がりと言える業績の背景には、何があるのか? これまで放映されたテレビCMから見えてくる要素が「徹底したターゲットの絞り込み」と「アプリ認知度への客観性」です。初のテレビCMでは、ショッピングに積極的なF1層に人気を博したテレビ番組からタレントを起用。鋤柄氏は「完全に新規獲得を目指したクリエイティブ。『メルカリ』の認知度が低い中、その名前と『フリマアプリ』であることを知ってもらうため、シンプルなコミュニケーションに徹した」と振り返ります。

初のCMから1年半ほどが経過し、ある程度、認知度が高まってきたころで制作したのが、初回に反し、タレントを起用しないCMでした。どのような状況にある人物がこのアプリを利用し、どのように利益を得るのかを明朗かつポップに映像化。さらに『メルカリ』とは、具体的にどのようなことができるアプリなのか、軽快なミュージックソングにのせて伝える内容になっています。鋤柄氏は「それまでに打ったCMの中で、最も獲得効率が良かったのが、この『売ルフ&買ウガール』」と打ち明けています。

■CM メルカリ『売ルフ&買ウガール』編

ターゲットの絞り込み、アプリ認知度への客観性はテレビCMだけでなく、オンラインでのプロモーションにも表れています。

2016年6月に第一弾が解禁となったインフルエンサー施策が、その代表例です。

著名なYouTuberを起用し、『メルカリ』を実際に使用する様子を動画で配信。ここでも、F1層に向けた人選の結果「メルカリの使いやすさに対するリアクションを含め、出品&購入の方法を細かく説明できたので、かなり腑に落ちる内容に仕上がった。事実、通常のディスプレイ広告に比べ、CPIも低く、アプリダウンロード後のアクションも良かった」という手応えのもと、半年を経た2017年1月にはターゲット層を“ALL”に切り替え、再びのインフルエンサー施策を実施しています。

■YouTube動画『服フリマに出してみた!!!!!!【メルカリ】』

こうした段階的なプロモーションの中、2017年2月に新規・既存の双方を狙った施策が『こじはる 卒業キャンペーン』です。幅広い層に話題を呼ぶ小嶋陽菜元AKB48の起用で、「既存ユーザーの購入が活性化された事例」だったそうです。

メルカリ『こじはる 卒業キャンペーン』 ※現在キャンペーンは終了

一方、アプリをメインとする企業にとって、オフラインイベントやテレビCMによるCPIやCPAをどう評価するかは容易ではなく、施策始動のカセとなる側面もあります。しかし『メルカリ』では「潜在層の大きいアプリだからこそオフラインにも広め、デジタルで刈り取るというプロセスや重要性を経営陣含め、社内全体が理解している」と鋤柄氏。

事実、『メルカリ』がオフライン施策でも高い成果を上げていることから、予算を配分する経営陣が自社のアプリが持つ潜在能力を確信していればこそ、チャレンジングな施策に乗り出せる背景が見えてきます。

(左)株式会社メルカリ 鋤柄氏、(右)株式会社D2C R 戸倉氏

そして、『メルカリ』のプロモーションで特徴的なのが、代理店を通さず、社内で広告を運用するインハウス化です。

この選択のメリットについて鋤柄氏は、メディアによって代理店を使うことも少なくないという前提のもと「ユーザーからどのような出品アイテムが、どう評価されているのか。社外に出せないデータまで、広告配信に活かせるが大きなメリット」と明かします。

一方、「社内だけですべてのクリエイティブをまかなおうとすると、クオリティに偏りが出てしまう」と、代理店に依頼することで可能となる多様性も評価しています。

オンライン、オフライン、そしてインハウス化と多様なプロモーション施策を続ける『メルカリ』。今後については「オンラインで言えば、リテンション広告の強化。そしてオフラインでは、現状の女性メインのサービスという印象から、男性にもしっかり使ってもらえて、さらにおしゃれさ、クールさをイメージづけられるブランディング施策を模索中」と鋤柄氏。

今後も、その動向から目が離せません。

セミナー主催:株式会社D2C R

(記事提供:D2Cスマイル

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