9月4日の日本経済新聞で、グーグルが天気情報(位置情報)を組み合わせて広告を配信するという記事「グーグル、天気や気温に応じ広告 最適な内容配信」がありました。
以前から、一部配信業者で天候を使ってターゲティングをしていたものの、グーグルが参入することで、どのように変わるのでしょうか。今回は、グーグルのマイクロモーメントと天気連動配信についてです。
Googleの提唱するマイクロモーメントと天気の関係
グーグルが2015年7月に提唱したマイクロモーメントとは、人が何かを知りたい、見つけたい、観たい、買いたいと思ったときに、反射的にスマートフォンやタブレットに向かうその瞬間のことを指しています。
今回のテーマ「天気連動配信」は、天気という切り口でWant-to-know moments(知りたい)、Want-to-go moments(行きたい)、Want-to-do moments(したい)、Want-to-buy moments(買いたい)という「瞬間」をとらえる施策です。
グーグルの「マイクロモーメント」の詳細は「Micro-Moments: Your Guide to Winning the Shift to Mobile」のPDFを参照してください。

「Micro-Moments: Your Guide to Winning the Shift to Mobile」PDF
今までの天気連動型広告配信の仕組みと課題
今までの天気連動型広告配信は、予報データを定期的(数時間)に広告配信側に取り込む仕組みでした(「フリークアウトとイーグルアイ、天気情報に基づいたRTB買付機能を共同開発・提供開始へ(MarkeZine、2013年5月15日付)」参照)。
しかし、従来の仕組みでは、さまざまな課題があります。
■地域を区分するデータがIPアドレス
上で紹介した天気連動型広告配信は、IPアドレスを利用して位置情報を判別しています。しかし、IPアドレスの仕組みでは、正確に地域を把握出来ません。また、無線LANでスマホ接続する場合はIPアドレスが変わりませんが、3GやLTE通信ではIPアドレスが変わるため、IPアドレスのみの位置情報判別では正確性に欠けます。
■天気「予報」データの活用
広告配信業者は「どこどこJP」やWeather Underground社などから天気データの提供(予報)を受け、広告配信をします。しかし、あくまでも「予報」であるため、外れることは避けられません。
■天候データ(セグメント)をリアルタイムに反映させることが出来ない
天候データ配信は、主にDSPでセグメント配信されていますが、リアルタイムで提供元からの反映が難しく、予報データのセグメントを数時間から数日置きに広告配信に連携する仕組みのため、「予報」が変わっても変更が出来ません。
グーグルは、天気連動配信(仮称)をどうして開発できるのか?
あくまでも想像の域を出ませんが、グーグルしか持っていない掛け合わせデータがあるのではないかと考えられます。
グーグルは、Googleマップなどの正確な地域情報とスマホを利用する際のログイン情報を持っています。そこから得られるユーザーの位置情報(GPSなど)をベースに、天候情報のリアルタイムデータを組み合わせることで、天気や気温などの情報をリアルタイムでインターネット広告に反映させる仕組みを可能にしたのではないかと想像できます。
単純に機能やデータを提供できる業者は多く存在しますが、上のようなデータをユーザーの許諾がある状態で活用できる業者は多くありません。
どのような広告主が利用するのか?
天気連動はやはり、店舗誘導などに活用されると思われます。気温や湿度、日当たりなどが商品の売れ行きに影響するだけでなく、細かな気温の差によって売れ筋商品が微妙に変化することがわかっているPOSデータなどと連携して、より消費者の「いま」に働きかける広告配信が可能となるかもしれません。
そういった広告配信が可能になると、インターネット広告からインターネットのサービスへの誘導だけではなく、インターネット広告から店舗への誘導も活発化してくるのではないでしょうか?

今後の課題
今後想定される課題としては、広告主の中だけでも、店舗の商圏などが違うため天候に合わせた入稿の手間などが発生すると想定されます。POPなどで即時にプロモーションが可能な実店舗でも、天候に関しては訴求方法で苦労しているところです。しかし、インターネットが介在することで、商機を逃さず、ユーザーにとっても有益な情報が提供できると期待出来るサービスではないかと思います。
グーグルは、Google検索、Googleマップ、Google+にビジネスの情報を掲載できるGoogle マイビジネスを活用した広告配信の整備を進めています。広告主はGoogle マイビジネスとして一般に公開する店舗の情報を整備しておくだけでよく、広告出稿のためだけの店舗住所の入力や入稿は必要ありません。それだけでなく、住所データはGoogle AdWordsの住所表示オプション(Location Extensions)として、道案内などの広告クリエイティブも最適化してくれます(「Google AdWordsがリアル店舗来店者数を計測開始(Global Adtech)」参照)。
他の配信業者もこれを機に「天候」や「リアルタイム性」、「クリエイティブの自動表示」などに向き合っていくのではないかと考えられます。
(記事提供:D2Cスマイル)