ECの「かご落ち」はなぜ発生するのか? 意外な「買わない」理由と対策

2016/12/02

James Spittal

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商品をカートに入れたのに最終的に離脱してしまう「かご落ち」の問題。フォームなどのシステムの問題だけかと思いきや、実は改善すべきポイントは多そうです。

ECサイトを運営したり携わったりしていて(規模の大小に関わらず)、かなりの数の潜在顧客が決済ページにまで進むものの、ぞくぞくと去っていく状況を体験している人は多いのではないでしょうか。決済ページでの離脱を減らして改善できる、いまからすぐ始められるコツを紹介します。

統計によるとかご落ち率(カート放棄率)は驚くほど高く、もっとも高い数値を示すデータはSalesCycleの調査による75%以上、少なくてもMarketingSherpaの調査でも60%近くもあります。どれが正確な数字かはともかく、とても高いことがわかりますね。

カスタマーの離脱理由を把握する

調査では、カスタマーが決済ページでECサイトを離脱する最大の理由は「追加料金が高すぎる」(配送料、税金、手数料など)ことにあるとされています。続いて、ゲスト決済のオプションがなくアカウント登録しなければならない、決済プロセスが長くて複雑、購入の準備ができていない、値段が高い、保存/ウィッシュリスト機能やそのほかの機能がなかったことなどが挙げられています。

Baymard Instituteは2016年にアメリカ国内の1044人の回答をもとに、同様の調査研究しました。

Baymard Institute checkout abandonment study

出典:決済時に離脱する理由についての調査研究(Baymard Institute

Forrester Research、BI Intelligence、VWO、そのほかの調査会社によっても同様の調査結果が明らかになっています。

VWOが2016年に実施した調査で、Webサイトの訪問者がオンライン購入を断念した理由として挙げた主な回答は次の表のとおりです。

VWO checkout abandonment survey

Baymard Instituteが実施したユーザビリティに関する調査では、決済プロセスのユーザビリティに関連する問題は、非常に多い520件以上に上り、さらにこれらは1-800-FlowersやLevi’s、アップルといった有名ショッピングサイトにありました。有名サイトなら問題点は熟知しているはずだと思い思いがちですが、カスタマーの決済体験が貧弱なのは中小企業に限った話ではないのです。

幸い、こうした課題のすべては、滞りなくもっとスムーズに決済できるように修正できます。もちろん、カスタマーの離脱理由がわかっても、離脱の原因となる課題の解決方法を教えてもらえるわけではありません。

もっとも大きな問題点をいくつか取り上げながら、解決方法を考えていきます。

配送に時間がかかる、税金・配送料金が高い

電化製品からペットフードまですべての商品の配送料が「お急ぎ便」でも無料になるアマゾンプライムの台頭で、カスタマーはより速く配送されることを期待するようになってしまったと容易に想像できます。でも私たちはアマゾンではないのです。配送に時間がかかったり、配送料が高いと、そのままカスタマーの期待を裏切ることになるのでしょうか。そうとは限りません。

解決策

ビジネスの拠点によっては、配送プロセスを合理化できる地元の配送業者との取引が可能かもしれません。従来、アマゾンのような方法は、梱包して追跡する社内ソフトウェアのカスタマイズに多額の投資が必要でした。有難いことに現在は、その地域でもっとも人気の高い配送業者と連携して特化した物流ソリューションがたくさん登場しており、追跡、配送、在庫品の管理から、会計管理やフリートマネージメントまで可能なこともあります。

税金については(別の場所でショップを開くといった方法以外には)できることはほとんどありませんが、クーポンや、特定のエリアに入るとエリア限定の特典や割引を通知するジオフェンシングをうまく使えば、心理的な抵抗を和らげられます。

Improve checkout abandonment rates with free shipping

オーストラリアの有名なEC小売ブランドの1つは、一定金額以上で配送無料にするという形はとらずに、配送無料まであといくら注文すればよいかを表示しています。アリペイなど複数の支払いオプションをそろえて、支払方法にも柔軟に対応しています。

しかし、多分もっとも影響力が大きいのは、経費がかけられるなら、やはり配送無料サービスで、コンバージョン率の上昇には断然有効です。どの程度までカスタマーは無料配送にこだわるのでしょうか。

結果に、驚くかもしれません。

ComScoreの調査によると、調査対象のカスタマーのうち90%が配送無料にするために具体的なアクションをとり、そのうち58%はカートに商品を追加し、45%は一番遅い配送オプションを選ぶと答えています。

Webサイトの問題:読み込みに時間がかかる、ページが固まる、複雑な決済プロセス

ショッピングカートのプラットホームやサイトそのものの技術に関連したWebサイト特有の問題が離脱につながっていることもあります。具体的にはWebサイトの速度と決済プロセスの速度の2つの問題ですが、どちらもカスタマーに影響を与えます。

読み込みの問題に関しては、読み込み速度を遅くしている原因を調べることをおすすめします。GTMetrixやグーグルの PageSpeed Insightsなどのツールで確認できます。どちらのツールでも、読み込みを速くするのに役立つヒントが得られます。比較のために、ツールでAmazon.comの読み込み速度をチェックしてみます。

Amazon page performance scores

GTMetrixは、複雑な課題のパフォーマンスと読み込み速度の改善に関する対処法について豊富な情報を提供しています。CSSスプライトを利用するなどのベストプラクティスは、あまり一般的に使われていませんが、読み込み速度の最適化に有効な可能性があります。

解決策

SitePointの記事なのでこうした各問題の具体的な解決方法については割愛しますが、もし難しい問題にぶつかったら、近くのサーバー管理者に連絡し、フロントエンド開発者に対応してもらい、問題に対処してください。もしくはGoogleで「fixing [issue]」と検索すれば読み込み速度の問題に関するあらゆる関連記事がでてくるので、解決の参考になるはずです。

ページの読み込み速度が明らかに速い場合、決済プロセスそのものについてはどうでしょうか。ゲスト登録ができない、決済フォームで必須項目が多すぎるなど明らかに面倒な決済であるケースは少ないかもしれません。しかし、そうは言っても決済プロセスはカスタマーが懸念する重要な部分です。

Baymard Instituteのユーザビリティに関するレポートによると、カスタマーも決済画面での配送と請求情報の入力に関して問題を抱えています。共通認識というほどではありませんが、カスタマー体験を完全に不快にしてしまう、ちょっと苛立たせることというのはあります。以下のような改善がなされていない場合です。

  • チェックボックスをクリックして請求先と同じ住所を配送先にできる
  • フォームに入力した情報を保存し、間違えたときに1からやり直す必要がない
  • 郵便番号を入力すると県や市まで自動入力される
  • 必須と任意の項目が分かりやすい
  • 同じ情報(名前、Eメールアドレス、住所、ユーザー名/パスワードなど)を何度も入力する必要がない

評価の高い決済プロセスの例はこちらです。

Kogan secure checkout example

オーストラリア最大のオンライン百貨店Kogan.comの決済プロセスは合理化されていて簡単です。多段階の決済プロセスを採用しています(ステップ1のあとで訪問者が離脱すると、カートリカバリーのメールが送信される)。HTML5を使った各項目のプレースホルダは洗練されていて、カートの中身、合計注文金額、合計配送料が確認しやすく信頼感あるものになっています。Checkout(決済)の前に「Secure(安全な)」とつけることでも信頼感を植え付けています。Facebookやペイパルなどのソーシャルログインを利用して決済を速く済ませられるようにもなっており、主要なCTAボタンには「Submit(送信)」ではなく「Continue(続ける)」という表現を使っています。

サンキューページまでたどり着くこと

カスタマーの最終地点はサンキューページですが、多くのサイトでは考えられる障害について対策していないことでカスタマーがサンキューページまでたどり着くのを妨げてしまっています。ユーザーからよくある不満の1つは決済プロセスの入力項目が多すぎることです。ほとんどのショッピングカートがほぼ標準的で、請求/配送の詳細ウィンドウが控えめになっていても、確実に改善の余地はあります。

解決策

たとえば、決済画面が1ページだけだと、高い効果が示されています。アマゾンでさえ1クリック注文を独自開発するまでに至っています。幸いにも使用するショッピングカートのプラットホームによっては、決済を1ページにできるオプションが利用できます。現在、WooCommerce、OpenCart、Magento など、さまざまな人気のカートシステム向けにプラグインや拡張機能も登場しています。

1ページ決済はコンバージョンに悩むECサイトの万能薬となるか?

必ずしも1ページ決済が解決策になるとは限りません。Baymardのユーザビリティレポートでは、複数ページ決済のコンバージョンが単独ページ決済よりも高い場合と、その逆の場合の両方が複数のテスト結果で出ています。ユーザビリティの問題を引き起こす課題の中心は、決済画面のページ数そのものではなく、むしろユーザーがもっともフラストレーションを感じやすい個別の項目(請求先と配送先を同じ住所にするのにチェックでできないなど)にあります。

すべては検査してみれば分かります。検査して、カート放棄になってしまう不満とためらいの原因となっている、ユーザーのあらゆるフラストレーション、苛立ち、率直な戸惑いに気づいてください。ターゲットオーディエンスはそれぞれ違うし、好みもあり、決済手続きに対する先入観も持ち合わせています。ユーザーがつまずいて、購入プロセスから外れるような原因があるなら、決済画面のページ数にかかわらず、気づいて正しく直すべきです。

登録を強いられることへの苛立ち

しかし、どのような決済システムであっても、登録を強いるのは問題です。

決済前、あるいはゲストとして決済できないので、ユーザー登録しなければならない状況は、確実にその場で注文が放棄されます。

Woolworths registration

残念ながらオーストラリアのWoolworthsスーパーマーケットのポータルサイトで野菜を注文するには、ログインか新しいアカウントを登録しなくてはなりません。アカウントを持たずに「ゲスト」として注文する方法はありません。

ビジネスの視点に立てば、登録を促すことは、カスタマーをフォローアップでき特典提供できるので、スマートな方法に思えるかもしれませんが、ユーザーにとっては登録への見返りはなにもありません。急いでいるかもしれないし、贈り物として購入するだけで、特典やカタログなどのメールは必要ないかもしれません。カスタマーはできるだけスムーズに問題なく決済したいだけなのです。

スマートな決済だと、注文内容を保存して次回購入時により速く決済できるようにしたり、ゲストだと利用できないウィッシュリストやそのほかの機能を作成したり、保存したりと、任意のユーザー登録でもでも登録しくれることもあります。どちらの方法が、購入そのものに結び付くでしょうか。

「カートに追加」から購入に至るには

ユーザーがサイトを訪れ、商品に興味をもち、価格と配送条件に納得してくれたのに、離脱してしまうというパターンは本当によくあります。これまで述べてきたように、単にあとで購入するために商品を保存したいかもしれないし、購入準備ができていなかっただけかもしれません。前者のために、多くの人気のショッピングカートプラットホームではウィッシュリスト機能を組み込んでいます。

また、そのときに直接コンバージョンに至らなくても、一定間隔でカスタマーをフォローアップし、特に値段が下がったりセールのときなどにウィッシュリストに保存された商品をリマインドするオプションも必ずついています。

なにより優れているのは、「カートに追加する」や「ウィッシュリスト」イベントは(Google アナリティクスのような)追跡解析システムで貴重なデータとなり、Webサイトのパーソナライズにも役立ちます。

解決策

購入準備ができていないので商品を保存したくないユーザーに対しては、どうすれば良いでしょうか。答えは購買ファネルにあります。購入までのパスは、最初から最後まで基本的なパスになるのではなく、曲がりくねった道のように何回も引き返します。

カスタマーはGoogle検索結果からサイトに来たとしても、ほかのサイトでも価格をチェックして、配送オプションを比較し、どこかにクーポンがないか探したり、カラー、サイズ、そのほかの詳細を比べて、商品のベストプライスを見つけようとします。ソーシャルメディアで友人や家族の評判で一番良いものを聞くこともあります。このように、ストレートにコンバージョンを獲得できるわけではないのです。

また、カスタマーは希望の決済方法が利用できないと、購入に二の足を踏む可能性もあります。特にペイパルが使えるか否かは重要です。多くのカスタマーはクレジットカードでの購入に抵抗があり、もし、ペイパル経由の銀行振込も選べず、クレジットカード決済しかなければ、カスタマーはペイパルか希望の決済方法が選べる違うサイトに移ってしまうかもしれません。

販売後のフォローアップ

最後に、ここで挙げたポイントをすべて見直して、決済プロセスが改善されたとしても、かなりの数のカスタマーが一度だけの購入で、リピートに至らないことに気づくかもしれません。販売する商品が1回買えば済むようなものではない場合、リピーターになってもらうにはどうすれば良いでしょうか。

決済に問題がなかったのに、カスタマーがオンラインストアに戻ってこない主な理由の1つは、アフターセールスサービスにあります。または、アフターセールスサービスがないことです。購入した途端に、販売情報、新商品、割引など営業メールが押し寄せます。ストア側は良かれと思ってニュースや販売情報を知らせているのかもしれませんが、たいていのカスタマーはこのようなやり方を好ましく思っていません。

私たちはたくさんのECクライアント向けに、Delighted.comを利用して最近購入したカスタマーを対象にネットプロモータースコア(NPS)調査をしています。

この調査で、購入後の問題点をすぐにチェックでき、長期にわたってECでより良い顧客価値を提供し続けることを妨げているものはないか確認できます。

Delighted NPS study

有名なECブランドの依頼によりDelighted.comを利用したコンバージョン監査研究の一環で実施したNPS調査では、過去90日間にECストアで購入したカスタマー3000人を対象としました。回答人数は467人で、回答者の83%は支持者に分類されました。これはかなり高いNPSスコアで(スコアは-100%から100%の範囲で表される)、販売後の質問に対する対応、素早い配送、販売後のメールマーケティングの質がすばらしいことを物語っています。

完全にカスタマーを失うリスクを冒すよりも、カスタマーがメール配信を希望するか選べるようにしてください。もしかしたら主要なセール情報だけ知りたいのかもしれませんし、商品情報に興味はあっても頻度はもっと少ない方がよいかもしれません。たいていのメールマーケティングシステムでは、カスタマーが個々の購読を選べるようになっており(プロフィールやアカウントを呼び出して設定するものもあります)、適宜設定を変更できます。

決済システムの改善に向けた第一歩

ECサイトのコンバージョン率を改善することに関しては、プロセスそのものを分析するだけですべての問題を解決できるわけではありません。カスタマーが購入しない理由を少し掘り下げながら、できる限りシンプルなプッシュボタンで決済できる方法が最終目標になります。

最後に、大事なのは高品質なユーザビリティとコンバージョンリサーチを実施することです。調査票を使って、決済プロセスを使った生のユーザーの声を聴き、どこでユーザーが行き詰まり、離脱しているかを見ます。ECビジネスによってオーディエンスも異なれば、チェックアウトファネル部分で離脱の原因となる点も違うので、決済の最適化がどのような場合にも当てはまるわけではありません。

なによりまず、常にカスタマーの視点で最初から最後までのプロセスを見てください。販売に結びつかない原因があれば、取り除くべきです。直感に反しているように聞こえるかもしれませんが、商品についてもっと調べたり、クーポンを探すなど、ほかのサイトに移らせるようなきっかけを与えないでください。自分のサイトに必要なすべての情報がなければ、カスタマーにほかのサイトで見つけてくれとお願いしているようなものです。

ぜひ決済ページの改善に取り組んでください。A/Bテストを実施し、目に見える形で影響を測れれば理想的です。

(原文:How eCommerce Pros Can Reduce Checkout Abandonment Rates

[翻訳:和田麻紀子/編集:Livit

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James Spittal

Conversion Rate OptimisationとA/Bテストで有名なデジタルマーケティングエージェンシーWeb Marketing ROIの創業者です。A/Bテストとサイトのパーソナライズ化で、トラフィックの多いサイトのブランディングに貢献しています。

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