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WordPressへの移行を成功させる、たった4つの教訓

2016年08月02日 05時52分更新

文●Sal Partovi

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Web 2.0時代のブログブームから10年。ずっと運用してきたレガシーなブログをWordPressに移行するのは、考えただけでも大変そう。マーケティングメール配信事業者として著名な「キャンペーンモニター」のマーケティング担当者が教える、移行のためのヒント。

企業のブログは、Webサイトやアナリティクス、Eメールマーケティングと併用される、デジタルマーケティング戦略の主たる要素の1つです。

コンテンツマーケティングによって存在感を増し、より多くのカスタマーを惹きつけたいと願う多くの組織にとっては、ブログの改善こそが重要なファーストステップになります。今日、無料でブログ活動を始められるプラットホームはたくさんあります。もっとも小規模な事業者であっても強力なコンテンツパブリッシャーになるための支援をしてくれます。

しかし、自社がすでにブログを運営している場合はどうでしょう?

そして、その既存のブログとプラットフォームを運用して10年くらい続いているといった場合はどうでしょう?

この記事は、10年間のブログ資産を引き継いだチームが、デザインと全体的なユーザーエクスペリエンスを刷新し、オーガニックサーチのトラフィックを1つでも増やし、コンテンツライターがフラストレーションが溜まってノートパソコンを窓から投げ捨てるのを防ぐことを目的に、ブログ資産を引き継いで新しいプラットフォームに移行するまでの物語です。

改革の時

私は1年半前にデジタルマーケティングを担当するために、Campaign Monitorに入社しました。

Campaign Monitorは、成長を目指す企業のための洗練されたシンプルなEメールマーケティングプラットホームを提供しています。Campaign Monitorの製品とチームの大ファンだったので、仲間に入れてずいぶん興奮しました。この企業には2000年代前半にまで遡るような長く素晴らしいブログの歴史があります。デジタルマーケターの観点からすると、素晴らしい継承資産です。コンテンツページの毎月の閲覧数の半分は、Eメールマーケティングに関するインサイト溢れるブログ投稿のおかげです。

永く続いてきたブログの継承とは、裏を返せば10年にわたるブログのインフラの継承を意味します。この部分はあまり愉快なものだとは言えません。

私たちのマーケティングチームは急成長していて、コンテンツ制作の規模に追いつけるようなモダンなコンテンツプラットホームが必要になりました。古いブログのインフラは考えられないほど使いづらいものでした。投稿は、HTMLをコーディングし、投稿待ちのブログ投稿にするために多段階のプロセスが必要で(チームのほとんどは、最終稿の投稿プロセスにDreamweaverを使っていました)、投稿するプラットホームへのコピー&ペーストが必要でした。コーディング工程でのどのような些細なミスも、これまでの投稿を完全に台無しにする可能性がありました。コンテンツチームにとって悪夢のような作業でした。

当時のコンテンツチームは、コーディングしているよりも記事を書いているほうが幸せな人たちの集まりでした。なんとか新しい記事を問題なく投稿できたにもかかわらず、最終的に出来上がったページはSEOフレンドリーではなく、実際にサーチエンジンに最適化されてもいませんでした。私たちのコンテンツ制作は、錆びついた自転車にハイオクのジェット燃料を注入するに等しいものでした。

コンテンツチームへ、今までのものに代わるなにか良いものを提供する責任がありました。

Campaign Monitor Old Blog

このような苦労をしていた私たちには、土台から作り直された新しいブログが必要でした。こうして「ブログ改造計画」というプロジェクトが生まれました。このプロジェクトには、経営層、プロダクトマーケティング、デザイン、Web開発、運用そしてコンテンツマーケティングといったいくつものチームにまたがった、内部の力強い一体感が必要でした。

教訓その1:すばらしいプラットホームのための組織づくり

始めるにあたり、プロジェクトをいくつかのフェーズに大別しました。

  1. グラフィックデザイン:構造、カテゴリー、ワイヤーフレーム
  2. デジタルデザイン:コーディング、レスポンシブな見た目と感触
  3. データ:すべてのURLとカテゴリーのエクスポート、URLの再分類および再構築、サーバーサイドの301リダイレクトを使った古いURLから新しいURLへのブログ運用中の移送
  4. WordPress:新しいブログの作成とホスティング、コメント用の新しいプラットホーム

チーム内では、シンプルなスプレッドシートで作った「新ブログローンチトラッカー」を使いました。このトラッカーには大別したフェーズとともに個別のサブタスク、責任者、ステータス、日付が入っています。トラッカーの目的は、チーム全員が現状を常に把握できるようにするとともに、ほかの関係者にも状況を可視化して見せることでした。私たちが複数のタイムゾーンにまたがったプロジェクトで働く国際的なチームだった関係もあり特に重要でした。

いくつかの理由から、ブログのプラットホームはWordPressに統一しました。前の会社では、Web上での活動はすべてWordPressを使って管理していました。コンテンツ部門の責任者とオーガニック獲得部門の責任者の双方に、過去に企業の公式WordPressアカウントを管理していた経験がありました。自社のコンテンツプランニングツールは、ブログの更新が容易なWordPressとシームレスに統合できました。

WordPressこそが世界中どこでも通用するブログ用プラットホームであることをチーム全員がよく知っています。これが最高の選択だったのです。

教訓その2:才能あるデジタルデザイナーとの協働

最初の2つのフェーズには、同時に取りかかりました。デジタルデザイナー(Mike Twigg)が、新しいブログの見た目と質感を作り出す責任者でした。一方、データチームはすべての古いURLをエクスポートし再分類/再構築しました。デザインチームとプロダクトマーケティングチームは、ブログに企業とブランドを反映し、最終的にはキーとなるメイン画像とともに(メイン画像を、トップページ上の大きなバナーにしました)、メインページ用のクリーンでシンプルな3ブロックのレイアウトにまとまるような、さまざまな選択肢を考えることに時間を費やしました。

古いブログデザインにはメインのブログページやブログ投稿欄用のメインイメージがありませんでした。デザインチームは古いブログと同様に新しいブログにも合うようなメインイメージを制作するという大変な仕事も担当することになりました。既存投稿に関しては、最新のものと、もっとも人気のある投稿に注力し、とにかく苦労しながら作業を進めました。これは退屈な作業ではありましたが、将来にわたるブログの成功を確固たるものにするためには重要でした。

Campaign Monitorは、成長企業のためのEメールマーケティングプラットホームです。新しいブログデザインでそのはメッセージを完全に明確にしたかったので企業およびブランドとして、次のように3つの主要なテーマを定義しました。

  • 洗練性
    • Campaign Monitorのブランドとメッセージの反映がトッププライオリティだと直接的に伝わるクリーンでシャープなデザイン
  • シンプル
    • これまでと変わらず、ブログ閲覧者の大半はWebサイトからのリンクではなくて、オーガニック検索またはEメール/マーケティングソースから
    • 明白なハイパーリンクやCTAは、ユーザーとCampaign Monitorにとって最高の反応を引き出すために重要
  • 読みやすさ
    • コンテンツプラットホームである以上、不要なものに気を散らされることなく、コンテンツにこそ注目してほしい
    • 大きなフォントやタイトルの大文字化、主要イメージ、イメージのサポート、ブログコンテンツを楽しむことに直接関連しないすべてのコールアウト(引用、統計そのほか)も重視

教訓その3:優れたネットワークエンジニアとの協働

デザイン変更が進む一方で、オペレーションチーム所属のネットワークエンジニア(Tynan Young)は、過去のブログ投稿を1000以上もエクスポートし再分類のフェーズに入れるようにしてくれました。新しい分類方法とブログ分類のURLに関しては、経営層とオーガニック獲得部門の責任者も含めた全員が考えを統一しておく必要がありました。

新たな分類にチームが結束されたすぐあと、この作業をExcelに移し、すべての既存のブログ投稿を再分類し、再構築しました(ギーク的メモ:こういう作業で特に使う大好きなExcel数式には、単純なtext-to-columnsconcatenate functions、安心して使えるVLOOKUPなどがあります)。このデータ関連のフェーズで作業している間にも、既存のプラットホーム上で新しいコンテンツを発行し続けるために、コンテンツチームとやらなければならない作業も山積みでした。

すべての新しいURLの準備ができ次第、ネットワークエンジニアが従来のURLから301リダイレクトを操作して、すべてのトラフィックを確実に正しい場所に移してくれました。

教訓その4:優れたWeb開発者と協働する

次のステップは新しいブログの構築開始です。コンテンツマネジメントシステムはWordPress、コメントプラットホームはDisqus、ホスティングプロバイダーはRackspaceをそれぞれ選びました。この時点からブログの構造が少し変わり、ブログのインフラに対するユニークなアプローチが始まりました。

担当してくれたWeb開発者(Ash Durham)は、新しいブログに対して「両方の世界でベストなもの」を目指しました。具体的には、

  1. ユーザー側の使いやすさと、WordPressならではの制作者側に対する配慮とともに
  2. マーケティングWebサイトが持つ本来のセキュリティとスピードを最終版の「製品」に備えること

です。このカスタム設定によって、スタッフが新しいブログ投稿をプランし、構成し、ドラフトを書くのに、アクセスしやすいWordPress環境ができあがりました。外部へ開かれたWordPress環境とともに、このような環境が内部ネットワークの裏で動いています。修正がいつでも簡単にできるようになれば、WordPress内蔵の「ファイル生成」のプロセスを使えます。このプロセスによって、いくつものテクノロジー(PHP、Python、Bash、GIT)を使って、最終的にはhttps://www.campaignmonitor.com/blog/においてライブでブログの静的ファイルを作成できるようになります。

投稿されたブログとWordPress間でやりとりが必要になるような、WordPressの従来からのプラグインはこの設定では使えなくなります。しかし、すべてのブログ投稿にとって有益になるWebサイトのスピードとセキュリティを確保するために、喜んで許容できるトレードオフでした。

最終的に実際のプッシュとライブ運営の準備ができたら、あとはWeb開発者とネットワークエンジニアが引き継ぎます。ほとんどは最新のものと考えられますが、移行しそこなっているかもしれないあらゆるブログ投稿とともに、過去の投稿に対する最新のコメントなどといったすべてのデータを、最終的に新しいプラットホームに移行しました。

ライブ運営を開始する日には土曜日を選びました。その日、過去のブログを積み下ろし、新しいWordPressブログを新しいページにライブ投稿しました。301リダイレクトと新しいブログを世界に向けて配信した瞬間です。

Campaign Monitor New Blog

結果

ほとんどのマーケティングプロジェクトは、なんらかの成功指標で測られます。

このプロジェクトに関して一番重視した点は、失敗についてでした。

ブログ移行においては、どんな些細な問題も、サーチボリューム、トラフィック、オーガニックランキング、ひいては売り上げの目標に対して、大きなネガティブインパクトを与えるおそれがあります。1000以上のブログのURLをまったく新しいプラットホームに再構築し、かつトラフィック数になんの影響も及ぼさなかったとしたら、最高の気分ですよね。

ブログ移行の実際の結果は、データだけ見てもすばらしいものでした。

何1つ損なうことなく新しいプラットホームに移行することを願っていただけですが、結果としてブログへのオーガニック検索のトラフィックが毎月50%増加しました。マーケティングWebサイトのユニークユーザー数も毎月8%増加。以前のプラットホームでは実際には、なにも良い効果が得られませんでした。特にオーガニック検索の面ではまったくダメでした。新しいブログ投稿を予定時刻通りに公開するという点に関してもよく遅れていましたし、ブログの更新能力を低下させていました。こうしたこのような事実と、オーガニック検索に最適化された極めてモダンなブログインフラによる恩恵を合わせて考えてみれば、結果がすべてを物語っています。コンテンツチームは新しいプラットホームが気に入っています。鍵となった統合作業のおかげで、コンテンツをスケジュール通りに制作し、コンテンツプロデューサーがほかの雑務に時間をとられる代わりに、楽しく記事を書いていられるのです。

(原文:Lessons Learned from Migrating 1,000 Blog Posts to WordPress

[翻訳:島田理彩]
[編集:Livit

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