Excelの「おせっかい」に見る、UXデザインで守るべきたった1つの原則

2017/02/20

Alex Walker

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ユーザー視点で考え、実装した機能がときにただの「おせっかい」となることがあります。たとえば、フォームの改善事例で「実装すべき」とされる「オートコンプリート(オートコレクト)」は、本当にユーザーのためになるのでしょうか。

誰もがオートコレクト機能が原因で頭を悩ましています。

「正確な」メッセージを考え出し「送信」を押したのに、予期しないことが起こるのをスローモーションで見ることになります。これは、オートコレクト機能が原因でメッセージが意図しない内容に変更されるからです。送信する段階になるとメッセージの内容が笑えるような内容に変更されますが、もうあとから変更はできません。

ポケットにMr. Beanを忍ばせているようなものです。

特に次の例がふさわしいと思います。なぜかというと、ほかの人に起こったことなので客観的に見られるからです。

SMS message fails

この例は、手助けをしようとしながら、反対の結果になってしまったプロダクトデザイナーの一例です。「I am leaving noo(nooには出発します)」とスペルミスのあるメッセージはまだずさんなメッセージだなという感じを持たれるだけですむかもしれませんが、「I’m leaving you(あなたとは別れます)」では傷付いてしまいます。これでは、笑えたものではありません。

しかし、オートコレクト機能の間違いがおかしな結果を返すにしても、オートコレクト機能は総合的に見れば優れたものだと思っています。修正機能のメリットはそのデメリット以上です。

ときには、これらの機能を利用することで被害を被ることもあります。

これは日付か?

Date formatting

ここ10年間に目にしてきた新しい「UIヘルパー」の1つの機能は、アプリケーションがプレーンテキストの日付を認識するものです。

人間は比較的簡単にさまざまな日付形式の違いを素早く理解できますが、ソフトウェアが次のすべての日付形式が同じ時点を指しているということをしっかり解釈できるほどに洗練されてきたのは最近のことです。

  • Wed 25th Jan
  • 25–1–2017
  • Wednesday, 1/25/2017
  • 1/25

実際に、Gmailやマイクロソフトワード、Slackなどのアプリケーションは「明日」または「来週の金曜日」などのコンセプトを日付として解釈できるほど賢く、日付をイベントや予約に変えられます。

これは非常に役立ちます。昔はこんなことはできませんでした。

メッセージを害さないようにする

マイクロソフトは昔ほど世界的な大企業として異彩を放ってはいませんが、非常に手頃な価格でソフトウェアを学校、大学、学会などに提供しているので、教育や研究部門に強い影響力があります。世界の大学の研究や論文の大部分がWord、Excel、Accessなどを組み合わせて作成されています。マイクロソフトが誇れることです。

しかし残念ながら、昨年、マイクロソフト オフィス スイートが2004年以降、遺伝子学研究論文の約20%に被害を与え価値の無いものにしたと報告されました。

なぜこのようなことが起こったか?

科学ではほとんどそうなのですが、遺伝子学にもほとんどの人が見たこともない独自の言葉や専門用語が使われています。たとえば、次の言葉をおそらく知らないでしょう。

SEPTIN 2

SEPTIN2はパーティ用のマスクのように見えます

Septin 2 (またはSEPT2)

Septin 2は腫瘍や癌の追跡および分析に使用されるタンパク質です(詳しくはよく分かりませんが)。研究論文では通常、「SEPT2」と呼ばれます。舞踏会のマスクみたいです。

膜結合Ringフィンガー(C3HC4)8(またはMARCH8)

膜結合Ringフィンガー(C3HC4)8(またはMARCH8)はネズミ、マス、人間などの生物に共通して見られる遺伝子です。抗ウイルス性の性質を持つ場合もあり、しばしば、正当な理由があって「MARCH8」と短縮して呼ばれます。

これらの研究論文の多くが数十から、場合によっては数百のページに及ぶもので、複数のExcelの表にそれぞれ「SEPT2」や「MARCH5」または「MARCH8」などが何千回も出てきます。

Excelはこれらの遺伝子名をどのように処理するか?

想像どおり、ExcelやWordはこれらの遺伝子の1つ1つを日付に変換してしまうのです。実際に、これらのデータがExcelにインポートされるときに自動的に名称変更されてしまう遺伝子名は全体で少なくとも25個あります。

「これは遺伝子ではない、カレンダーにあるイベントだ!」

予想外なのは、Excelが遺伝子名を日付に変換すると、変換前の名前を完全に削除してしまうことです。遺伝子名は25種類の異なる形式の9月2日に変換できますが、この処理を「取り消す」と、変換前の「SEPT2」に戻さずに、テキストを消去してしまうのです。

もちろん、データをインポートする前にデフォルト設定をオフにしておけば問題ありません。多くの研究者はこうすれば良いことを知っています。しかし、2004年以来、3600の遺伝子学に関する論文のうち720の論文でこの問題が見つかっていることからも、「異常な出来事」ではないと分かります。

遺伝子学や医療の研究にどのような影響を及ぼすかは正確には分かりません。しかし、データが損傷すると、必ず結果の質が悪くなります。科学者はほかの科学者のデータを利用します。そして、そのデータには欠陥があることが分かっています。

データ損傷がなければ、癌、抗生物質に耐性を持つスーパー耐性菌の治療薬開発に近づくのでしょうか?

おそらくそうなるでしょう。ただし、どの程度かは分かりませんが。

「メッセージを損なわないこと」

この考え方が医療分野の核心的な原則の1つです。言い換えると次のようになります。

状況を悪くしてしまうなら、なにもしないほうがましだ

ソフトウェアをデザインするときに従うべき普遍的な信条はありませんが、「状況を悪くしてしまうなら、なにもしないほうがましだ」という言葉がデザインの大原則と言えるのではないでしょうか?

新しい機能を設計するなら、メッセージを損なわないこと

(原文:The First Rule Of Good Software Design? First, Do No Harm!

[翻訳:中村文也/編集:Livit

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Alex Walker

Alex Walker

sitepoint.comのデザイン・フロントエンド開発者をマネジメントしています。またSitePointの「デザイン&UX」カテゴリーの編集も担当しています。

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