フルスタック/ゼネラリストのプロダクトデザイナーとして、私は業界が長らく肩書きばかりに気にかけているのを見てきました。批判的な立場で、批判的なツイートばかり続けることが、誰かのためになったことがあるのでしょうか?
「デザイナーはコードを書くべきか?」と同じく、「UXかUIか」は業界の議論の的になっています。
I label increasingly nonsensical images with ‘UI’ and ‘UX’ and hope they get used in serious presentations pic.twitter.com/tDJgRp6CO5
— Sebastiaan de With (@sdw) March 15, 2016
I got your shit projected 30 feet high at #kikk16. Felt appropriate. pic.twitter.com/S5jZT7IKb3
— Jules Ehrhardt (@ezyjules) November 11, 2016
一方で、こうした傾向はベテランデザイナーにとってストレス解消になるかもしれません。実際、 完全に特化したTumblrがあるほどです。
しかし、残念なことに、初学者にとってはストレスな業界だと感じ、近寄りにくくなる危険性があります。新しいデザイナーがこれほど業界に入りにくくなったことは、過去に例を見ないほどです(私はポジティブに捉えていますが)。
TL;DR
UIは、ユーザーインターフェイスを意味します。ユーザーがソフトウェア内やWebサイトで直接操作して見たり触ったり聞いたりできるすべてを指します。アプリのもっとも外側の層、操作部です。
現在のUIデザインは、使用されているデバイスの関係で、ほぼ視覚的な分野に属します。一方で音声アシスタントや会話インターフェイスなど、音声や書き文字のトラクションも増えています。
UXは、ユーザーエクスペリエンスを意味します。ユーザーが製品と接触する機会を表す全体論的な用語です。
デジタル製品に関わるユーザーエクスペリエンスには、ソフトウェアのフロントエンドだけでなく、全体の技術スタック、カスタマーサービス、ブランディング、企業の公的なイメージ、可用性、価格、コミュニケーションをはじめ多くの要素があります。
UIはUXの一部です。用語の意味が異なるので、相互に置き換えて利用すべきではありません。意味論的には「UX/UIデザイナー」の肩書きにはほとんど意味がありません。UIデザイナーはUXデザイナーであり、具体的な特定の専門分野を持たないUXデザイナーはまれです。具体性のない「UX」の会話になんの意味もありません。
「UI/UXデザイナー」の問題点
私が思う問題点は主に次の3つです。
- すべての人に誤解を生むケース:デザイナー、デベロッパー、リクルーター、創業者などの肩書きの利用。初級デザイナーがこれらの肩書きを使っていますが、責められません。誰もがやっていることであり、自分のスキルセットを正直に名乗るのは肩書きを利用するトレンドに乗り遅れます。
- 「UIデザイナー」だけでは十分ではないという間違ったキャリアパスが紹介されているケース:デジタルプロダクトデザインがPokemonだったとすると、「UIデザイナー」ではかっこいいといえないので、レベルアップしたバージョンとして「UX/UIデザイナー」が良いとされていませんか。
- 「UXデザイン」の重要性を大きく否定し無意味化するケース:UXデザイナーが作業を積み重ねた結果です。
UIはUXの一部である
ユーザーインターフェースとは人とコンピュータの関係性が生じる層です。重要なものですが、複数の分野のユーザーエクスペリエンススタックの層の1つに過ぎないのです。
テレビを視聴する場合を例に挙げると、テレビ視聴のUXにはコンテンツの品質、テレビの仕様、配置、家具、現在の気持ち、そのほかたくさんの要素が含まれます。一方、テレビ視聴のUIは、リモコンと画面上のメニューのデザイン、設計品質だけです。
UIとUXを例えた画像
群衆に向かって大声で文句を言う昔の時代の男になりたいとは思いませんが、UIとUXを比較した横並び画像は重要な点が抜け落ちています。デザイナーのSebastian de Withは、1年前、同じ意見をツイートしました。
何度も繰り返される「2つのケチャップボトルがある画像」と「草地にショートカットの小道がある画像」は意味がないだけでなく、むしろ逆効果です。UIとUXを互いに競わせることで、UIデザイナーの作業が無意味だと示しています。なぜなら、その製品はすでに別の方法で使用されているのです。
たとえば、有名なケチャップボトルの画像の誤りを正しましょう。2つの異なるデザインを比較して「UI」と「UX」のラベルを付けるのは意味がなく、必要なボトルは1本だけです。
- キャップとラベルとボトルがUIです。ボトルは直立しているほうでなく、どちらを利用しても構いません。
- UXは、企業ブランディングとマーケティングの成果、ケチャップ自体の栄養価や知覚される品質、実店舗またはネット上での発見および購入行為、ソーシャルメディア上でのカスタマーと企業の関係、企業と既存顧客および潜在顧客間の文字通りのさまざまな接触機会を組み合わせたものです。
用語「UX」の由来
UIは一般的な科学用語で、コンピュータの黎明期から使われています。UXが広まったのはずっと後で、UIはUXよりも古い用語です。
「UX」は1990年代半ばにDon Normanが広めました。Don NormanはNielsen Norman Groupの共同創業者の一人で、ベストセラー「The Design of Everyday Things」の著者でもあります。UXが使われるようになった当初から用語の意味は明確です。Don Normanは現代の具体的な問題に取り組む過程を映像に残しています。
UIは単なるGUIではない:APIを設計する
インターフェイスを考えるとき、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を思いつきます。今使っているデバイスやシステムのほとんどは視覚的なパラダイム(ウィンドウやアイコン、ボタン、ナビゲーションバーやスライダー、入力部)と関係しています。
UIとGUIがほとんど同じ意味になっているのには、もっとも理由があります。ほとんどのユーザーはコードをベースにしたツールを使用しません。それでも、UIは単なるGUIではないのです。
私の仕事はフロントエンドのデザインシステム構築が主なので、デベロッパーが利用するインターフェイスの構築も仕事の一部になっています。そういう意味で、コンポーネントのAPIが、コーディングを仕事にしている人たちにとってはインターフェイスになります。APIのサーフェイスを設計し、ドキュメント化する作業は、過去数年間でもっとも大変な作業でした。
コーディングをしないなら、こうした作業に時間を費やすことはおすすめしません。たとえ個人的な挑戦でもです。Reactをはじめとするフレームワークは、デザイナーとデベロッパーがSketchのファイルを共有して仕事をするよりも、意味のある方法で協力して進められます。
間違った二分法を拒否する
デザイン業界が肩書きや意味論にこだわるのは、一般的には好ましいですが、「UI」か「UX」かの議論をやりすぎると思わぬ問題が出る場合があります。白熱する議論ですが、私はJared Spoolとまったく同意見です。「すべての人がデザイナーである」。
これまで数え切れないほど、デベロッパーからすばらしいUIのアイデアをもらったり、ビジュアルデザイナーから貴重なユーザーフローの向上をしてもらいました。組織の中で自分の肩書きを意識するのは重要ですが、肩書きを超えた部分でも貢献できるようにしたいですね。
(原文:UI vs UX: What is the Difference?)
[翻訳:中村文也/編集:Livit]