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こんなAR HMDを待っていた!「Meta 2」に開発者が注目すべきこれだけの理由

2016年04月11日 11時26分更新

文●Patrick Catanzariti

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AR(拡張現実)は、コンピューティングにおける大きな波になろうとしています。ARが本当の能力を発揮すれば、すべての技術の考え方や利用方法が変わるでしょう。先週(編注:日本時間2016年3月2日)発表された「Meta 2」開発キットからは、ARの本当の能力の片鱗を垣間見ることができます。Meta 2の新しいヘッドセットを紹介する記事はすでにありますが、ここではヘッドセットの開発者が何を考えているのかに焦点を当てていきます。

かれこれ1年半ほどになりますが、幸運にも「Meta 1」開発キットを入手した筆者は、独自の試作アプリケーションと組み合わせて長時間実験してきました。Meta 1のSDKは、意外なことにUnityで簡単に扱えます。Meta 2は、これまで何時間もいじくり回してきたデバイスのはるか先を行っているように見えるのです。

Metaとは

Metaはシリコンバレーに拠点を置く企業で、2013年5月のKickstarterキャンペーンで成功して以来、ARの開発に取り組んできました。そのキャンペーンからほどなく、有名なY Combinatorプログラムにも合格しています。2014年9月、MetaはMeta 1開発キットを全世界の開発者に向けてリリースしました。Meta 1開発キットの特徴は以下の通りです。

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Meta 1が提供するARヘッドセット体験とは、正面の限られた視野に3Dのオブジェクトが投影されるものです。投影されたオブジェクトはユーザーの部屋で、触れたり、掴んだり、つまんだりできるように見え、現実世界のやりとりを見事に再現しています。筆者は、次の写真のような四角いマーカーを使って、筆者独自のARアプリケーションでARオブジェクトを現実世界に表示しました。

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先週、まったく新しいヘッドセットのコンセプト(Meta 2)の詳細が発表されました。Meta 2 の機能はMeta 1をすべての面において超えているようです。次の項でその機能について紹介します。

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改善された視野

ARヘッドセットの課題は、ヘッドセットの視野を可能な限り拡張することにありました。Meta 1やODG R-7スマートグラス、Microsoftホロレンズはいずれも視野が多少限られています。ある方向を見ると、視野正面の透明画面に拡張されたオブジェクトが現れると考えてください。この視野の概念を説明するのに最適な映像は、Microsoftホロレンズのデモビデオです。

Meta 1には2つの異なるレンズフードが付属しています。1つは視野が23度で、もう1つは32度です。ホロレンズの視野はおよそ30度で、ODGの最新の未発表の試作品の視野は50度です。こうした測定値は個々に比較はできないかもしれませんが(測定値が水平角度や対角線角度のものもある)、こうした数値から一般的な視野範囲は何となくつかめます。

Meta 2は今までのホロレンズをはるかにしのぐ、90度の視野があります。つまり、いまや画面のほとんどが拡張されて見えるということです。少なくとも、Meta 2製品発表ビデオではそのように見えます。

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これは開発者にとってARアプリケーションをより臨場感のある方法で紹介するための素晴らしい手段となるとともに、ARアプリケーションの可能性を広げるものです。視野が広がれば、今まで視野が狭かったために混乱していたかもしれないインタフェースに可能性が広がるからです。

高解像度になったディスプレイ

Meta 1の解像度は左右どちらも960×540(投影される画面はそれぞれ別)。MicrosoftホロレンズとODG R-7スマートグラスは左右とも解像度が1280×720です。

これに対して、Meta 2のディスプレイは全体で2560×1440と十分高解像度なので、文章も楽に読めるし、細部もよく見えます。視野に関してはゆくゆくは1度あたり20ピクセルになります。ディスプレイ技術の種類が違うので、Meta 2がホロレンズやR-7スマートグラスの域にどれくらい達しているのか、筆者にはよくわかりません。

解像度のプレビューが少し分かる映像はこれです。

出典:Robert ScobleのFacebook (Meta2のTEDでのイベントからスクリーンショットをいくつか投稿している。Facebookでもっとたくさんチェックしよう)

出典:Robert ScobleのFacebook (Meta2のTEDでのイベントからスクリーンショットをいくつか投稿している。Facebookでもっとたくさんチェックしよう)

開発者にとって、仕様をそのまま比較してもあまり役には立ちません。むしろ、どのような経験ができるのかが重要です。90度の視野に加えて細かいレベルまで詳細に見えるということは、ARアプリケーションやインタフェースで、はっきりした読みやすい文字を表示できるということです。3Dモデル内に、多くの詳細情報を表示するアプリケーションが開発できます。精密さが頼りの領域、例えば医療や建築、3Dモデリングなどにメリットがあるのは間違いないでしょう。

ARでARを開発

Meta 2はあちこちで使える仮想モニターで、常時使用しているPCディスプレイに取って代わろうとしています。机の上のずらりと並んだモニター群を整理したいと思っている、あらゆる開発者の興味をそそるはずです。Meta 2が現在対応しているWindowsアプリケーションには、Microsoft OfficeやAdobe Creative Suite (ARを使った映像制作レベルのアプリケーションを想像してください) 、Spotifyなどがあります。他のアプリケーションが対応するのが待ち遠しことです。ARでARの開発をするという夢が実現します。

Meta 2製品ビデオ

出典:Meta 2製品ビデオ

常にPCにテザリング

Meta 2とMicrosoftやODGのヘッドセットとの大きな違いは、Meta 2はPCに常時テザリングする必要がある点です。現在対応しているのはWindows 8.1と10ですが、うまくいけば年内にMacもサポートされる予定です。テザリングは視野の拡大や、アプリの能力を完璧に引き出す仮想モニターの機能などを実現するためのトレードオフに思えます。同時にバッテリーの持ちを心配する必要がない、ともいえます。

開発者にとってテザリングが必要な間は、テザリングが開発の制約になるのは間違いありません。ARアプリケーションがもっとも実力を発揮するのは、日常生活でMeta 2を装着して歩き回る場合で、ユーザーがある特定の場所にいることを前提に設計することではないからです。

技術が進歩するにつれて、Meta社はホロレンズやODGのようにテザリングを使わない方法を研究すると確信しています。だから、将来テザリングを使わない場合を想定してアプリケーションを設計しておくとよいでしょう。

眼鏡が掛けられる

ヘッドセット(特にVRヘッドセット)の最大の失敗は、使用中に眼鏡が掛けられないということでした。幸い、Meta 2の新デザインでは眼鏡をかけても問題ありません。

自然なハンドインタラクションと設計ガイドライン

Meta 2には、改善されたハンドトラッキングと開発者が使用する際の指針となる神経科学に基づいたインタフェース設計の原則があります。Meta社のチームが取り組んでいるコンピューティングに対する「Neural Path of Least Resistance(抵抗がもっとも少ない神経経路)」アプローチの狙いは、誰もが無条件に神経科学の原則に基づいてコンピューティング・インタフェースを完全に直感的に使えるようにすることです。

このようなインターフェース設計の原則と改善されたハンドトラッキングによって、開発者はARのオブジェクトに自然なインタラクションをずっと簡単な方法で実現できます。開発者はこうした原則を開発中に考案して設計しなければならないのではなく(全員がユーザーインタフェースの専門家ではないし、ARのようなまったく新しいプラットフォームともなればなおさらです)、Meta社の神経科学チームの成果を活用できます。プラットフォームに基づいて構築したARアプリケーションは、比較的単純で分かりやすい直感的なインタラクション原則を指針として備えることを願ってやみません。

また、真に洞察力のある開発者がこうした原則を採用し拡張して、ARアプリケーション分野の新しい設計原則を、Metaチームの設計原則に追加することを熱望しています。

Webサイトにはペンや絵筆のようなオブジェクトを追跡できると記載されており(これはLeap Motionの物体追跡ににているように思われます)、これもAR分野で非常に便利かもしれません。

空間マッピング

Meta 2ヘッドセットの武器は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:同時に自己位置の推定とマッピングをする)と呼ぶアルゴリズムです。このアルゴリズムは、ユーザーの位置を追跡し、ユーザーの周りの空間をマッピングしてオブジェクトをテーブルや現実世界に表示します。ホロレンズにも同様の機能がありますが、Meta 2の大きな視野と組み合わせると、開発者にとって非常に没入感のある、刺激的な可能性を生み出します。

少しお手頃価格に

Meta 2ヘッドセットは949米ドルで先行予約可能です。いち早く開発する者にとっては3000米ドルのホロレンズや2750ドルのODG R-7スマートグラスに比べて限られた予算でぐっと手に入れやすい価格です。ホロレンズやODG R-7スマートグラスは、コンピューターシステムを内蔵しているため価格が大幅に高くなります。多くの開発者は3分の1の価格で購入できて、テザリングシステムでARアプリケーションの開発を始められるので大満足だと思います。

Unityとの連携

Metaアプリケーションの開発ではUnityのSDKを使います。これはとても魅力的です。自分独自のMetaアプリケーションの開発を通じてUnityに精通するのに費やした時間は、VRのような他のプラットフォーム用の経験を積む上でとりわけ役に立つからです。また、すでにUnityに熟練した多くの開発者は、まったく新しい開発プラットフォームを学習する必要なく、Meta開発が習得できます。

結論

AR分野は現在、活況を呈しています。MetaやMicrosoftホロレンズ、ODG R-7スマートグラスにAR分野の他の企業(かなり多い)は、真に新しい世界を切り開き、ARが主流となる日を近づけつつあります。それでも本当に一般に広めるには2、3年かかる可能性が高いでしょう。技術的には開発者が試行を始めるための準備が整っているのは確かです。視野が広く高解像度で価格も手頃なMeta 2ヘッドセットは、魅力的な選択肢に思えます。

Meta 2用のアプリケーション開発に興味があるなら、Meta社のホームページで先行予約が可能です。Meta 1をクローゼットにしまい込んでいる開発者のためにARとMeta 1ヘッドセットの入門ガイドも用意しているので、もしこのニュースを見てもう一度挑戦したくなったらどうぞ。

(原文:What the Meta 2 Means for Augmented Reality Developers

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