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無料で使える超多機能なメルマガ配信システム「phpList」がスゴい

2017年01月24日 04時00分更新

文●Elio Qoshi

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マーケティングオートメーションやレスポンシブ Eメールの登場などで再び注目されている、メールマーケティング。海外ではMailChimpのような安価な配信サービスが人気ですが、オープンソースのphpListも追い上げているようです。

Eメールを使ったマーケティングの人気が急上昇しています。多彩なメッセージを配信して見込み客を獲得し利益を増やせると、MailChimpやEmmaのような会社がサービスを宣伝しているのを聞いたことがあると思います。オンラインで商品を宣伝する方法が増える一方ではあるものの、Eメールがいまだにもっとも効果的であるという研究もあります。「デスクトップは時代遅れ」という神話と比べてみましょう。モバイルは増加しているものの、デスクトップは定着しており、Eメールも同様と言えるでしょう。

なにより非常にプライベートな場所、すなわちEメールの受信トレイにアクセスしたいというあらゆる規模の企業からの需要がある中で、企業に取り入ろうとしのぎを削っているサービスが近年急増していることは驚くことではありません。

有名なEメールプラットフォームが地歩を固めている中、2000年以降、オープンソースも既存サービスの代替になろうと定期的にサービスをリリースして固定ユーザーを増やしてきました。phpListにアクセスしてみてください。phpListはEメールによるマーケティングアプリで、メッセージ、登録メンバー、追加機能にお金を払うことなく使えるのです。

Eメール送信に専用アプリを使う理由

マーケテイングの専門家は、言葉を遠回しに使う習慣があります(通常は商品を褒めちぎる表現にします)。Eメールマーケティングの用語が分かりにくいのは、そのためかもしれません。「メーリングリスト」がただのEメールアドレスの一覧で、「メールリストマネージャー」がEメールアドレスの一覧を扱うアプリケーションにすぎないとすると、MailchimpやphpListと、GNU Mailman、Thunderbirdのようなメールクライアントはなにが違うのでしょうか。MailchimpとGNU Mailmanは交換できるのでしょうか。答えは残念ながらノーです。

旧型のメーリングリストサービスは多数が多数にメールを送るプラットホームで、いろいろな人が1回の操作で1通のメッセージをグループの人たちに送り、グループの受信者はほかのグループの人たちに返信できます。先週(日本版編注:本記事は2016年11月25日に執筆された)120万人分のメールサーバーがクラッシュしたのは、イギリス国民保健サービスのヘルスケア従業員が1億8500万人に返信をしてしまったためです。多数が多数にメールを送れる旧型のメーリングリストサービスはプラットホームに高負荷であるというよい事例です。

一方、Thunderbirdは単一もしくは複数の宛先にメッセージを送るメールクライアントですが、送信に失敗したメッセージの管理や送信の統計情報の収集、多数の登録者への送信用には設計されていません。

MailchimpとphpListは1人が多数に送信するプラットホーム、すなわち1人が1通のメッセージを多数の宛先に送るものです。メッセージの受信者が返信したければ、送信者にだけ返信できます。リストのほかのメンバーへ直接返信はできず、プライバシー保護のために通常はほかのメンバーの情報は開示されません。

MailchimpやphpListだけでなく有名なEメールマーケティングプラットホームは、ほかのソフトウェアにはない多くの機能を持っています。内蔵されたEメールテンプレート、Webサイトやアプリに簡単にニュースレター購読フォームを統合する機能、登録者の好みに応じて自動でEメールをカスタマイズする機能などです。

phpListは有名ブランドに対してどのように対抗していくのでしょうか。3つのカテゴリーで性能を主要な製品と比較してみます(サルのマスコット度合では比較しません。)

phpListの編集機能

だれもがHTMLメールを好きなわけではありません。テーブルやインラインCSSでごった返していて、コードを直接扱っていること自体、文明に逆行しています。メールクライアントのレンダリングは予測不可能なため美しいメッセージを作り出すのは困難ですが、テンプレートがあるかマウスで操作できるエディターがあるサービスを使うと、少しは楽になります。phpListにはエディターのプラグインがあり、CKEditorは頭1つ抜きんでています。テキストの編集やメディアの埋め込みには使えますが、複雑なレイアウトは扱えず、タイプしながらテンプレートの適用はできません。floatさせた画像やテーブル配置には、専用アプリでデザインしたHTMLをコピー&ペーストするほうが簡単です。

テンプレートは多ければ多いほどうれしいものです。phpListは標準でインストールされていませんが、いくつかは公式に提供されています。理論的にはどのようなアプリケーションからでもテンプレートを使えますが(MailchimpがGitHubで公開している多くのテンプレートを含みます)、たくさんの優れたテンプレートを内蔵していれば探し回る手間が省けます。

レポートと統計

メッセージにサインして封をして配信すると、そのメッセージの影響を知りたくなるものです。開封率、クリック数、直帰数, コンバージョン数といった数値を配信成功後にチェックしたいでしょう。

ほかのサービスと同様に、phpListには先の項目やさらに突っ込んだ項目に関する詳細な統計情報があり、それぞれの登録者の履歴を完全に捉えられます。具体的には開封、クリック、訪問、変更で、応答時間も含みます。今後のメッセージを受信しないようオプトアウトしたすべての登録者を簡単に確認でき、どのキャンペーン後にどのような理由で(回答された場合)オプトアウトしたのかも調べられます。

ただし、ほぼすべての競合品とは異なり、phpListには棒グラフや円グラフのようなデータビジュアライゼーションがありません。ユーザーのエンゲージメントが上昇するのを見て満足したければ、PiwikかGoogle Analytics(どちらもサポートしています)を使うか、データをスプレッドシートにエクスポートして自分でグラフを作成します。

phpListにグラフは標準搭載する予定はないようなので、この点に不満を感じるユーザーもいるかもしれません。

インターフェイスは将来に期待

レスポンシブWebインターフェイスをサポートしているかは、百聞は一見にしかずです。太い指でもタブレットやスマートフォンでタッチしやすいかどうかについては、そこそこといったところです。優雅でモダンなデザインなのかと問われると、それはまったくダメだと答えざるを得ません!

Eメールマーケティングアプリの使いやすさは千差万別です。phpListはさまざまなデバイスで使用できますが、デザインは一世代前のものです。HTML5インプットやモーダルダイアログはありません。ただしページは操作しやすく、実用的な美しさは備えています。

しかし、現在UIを再設計しています。次期インターフェイスをのぞき見しようとphpListのCEOであるSam Tukeに個人的に問い合わせたところ、Bootstrapをベースにして大きく改善しているとのことでした。

phpList new design 1

phpList new design 2

幅広いユーザーに手堅いユーザーエクスペリエンスを提供できてこそオープンソースは真に成功すると私は信じており、まだ不十分だとはいっても、phpListがこの点で改善していることは喜ばしいことです。

一方、モバイルデバイス向けの公式なアプリはありません。Mailchimpやほかのサービスとは異なり、すべてブラウザーで操作できます。個人的には大きな問題とは思いませんが、モバイルから使いたいユーザーにとっては課題かもしれません。

豊富なインテグレーション機能

phpListには次に挙げるような、きめ細やかなインテグレーション機能があります。

  • サードパーティデータ送信
  • 組み込み可能なAJAX登録フォーム (貼り付けできるスニペットの出力)
  • リモートフォーム送信(phpListサーバーへのスタンダードWebフォーム送信データ)
  • 登録者用ページ
  • 新規登録者向けのランディングページ(カスタマイズできるテーマと内容)
  • 登録者別の設定ページ(カスタマイズできるテーマと内容)
  • フィード
  • 外部RSSフィードポーリングによるEメールキャンペーンコンテンツの作成(設定を変更できるテンプレート)
  • 定期的なポーリングによりWebサイトの内容をEメールキャンペーンの内容に変換

phpList SaaS

結局のところ、phpListの運営者もお金を稼がないといけません。phpList.comにアクセスすると自分でホストできるほかのソフトウェアに似た機能を、広域帯で信頼性を持って利用でき、サポートも提供されます。無料で試用できる一方、とても柔軟な料金プランが用意されており、登録者数やメール送信数に応じた料金プランだけでなく1ドルプランもあります。トライアルの場合は、最大300メッセージまで無料で送信できます。

phpList pricing

すべての面倒を見てくれることがphpList.comのメリットです。Eメールマーケティングのサーバーを稼働させるのは技術的に難しいこともあるでしょう。メッセージが実際に到着するためには、スパム対策の技術に関する広範な知識が必要です。ブラックリスト登録や配信速度制限を回避するには IPアドレスを細かく管理しなくてはいけません。SPF DKIMやReverse DNSなどの知識も必要です。もちろん自分でできる(またはできる人にやってもらえる)なら、phpListを自分でホストすれば大きな節約になります。

最後に

phpListは優れたビジネスモデルです。分散型の自分でホストできるソフトウェアソリューションをだれでも無料で利用できるようにしつつ、SaaSソリューションを競争力のある価格で提供しているからです。

(原文:Open Source Email Marketing with phpList

[翻訳:内藤夏樹/編集:Livit

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